7月5日(月)後編
「富士山十界修行」
時計の針が正午を過ぎた頃、中ノ茶屋に到着。
木陰を探してのお昼休みとなりました。出発前の多数決の結果
昼食はおにぎりでした。この後、修行に入るとしばらく、飲み食い
が出来ないのでしっかり食べておく様にと、たくさんのおにぎりと
飲み物が用意されていました。多分、コンビニのおにぎりの棚は
すっからかんになっていたと思われます。
気力もお腹も満タンになった一行は六根清浄の掛け声と共に、
歩き始めました。
この頃には、歩くことに集中しつつも、木のざわ
めき、風の音、鳥のさえずりを感じられる様になってました。あた
かも、誰かが遠くでお経を唱えてるかの様に聞こえてきました。
暑さにやられていたのかもしれませんが・・・。
そうこうしている間に、路肩に大きな石が見えてきました。
石の前に整列すると最初の修行が始まりました。
業秤(地獄界)の修行です。「不動石」と名付けられたその石は、
我々、修行者の過去の罪業の重さを量るとされ、石の重さと罪
業の重さが等しいとのことです。
皆様の期待どおり、石は1ミリも動きませんでした。まさに不動
石、持ち上げられないまでも、少しくらいは揺すれるんじゃないか
なんていう愚かな考えは軽々と跳ね返され、自分のバカさ加減と
罪業の重さに猛省させられました。その後、先達に教わり、皆で
唱えた御宝号はヘコんだ心に響きました。
十界修行という事は、どんな修行があと9回あるのでしょう・・・。
馬返しにて休息。暑くても水は飲めません。ここからやっとお馴染
の富士山何合目と道標が出てきます。まずは、一合目を目指しま
す。
一合目の鈴原社にて穀断(餓鬼界)の修行を、二合目の御室浅間社
にて水断(畜生界)の修行を行いました。
穀断・水断は、字の通り、一切の穀物・水を断ち、餓鬼の貪る心、
畜生の愚痴の心根を断つ修行です。中ノ茶屋から飲まず食わずで
歩いてきて、食べ物・飲み物の有難さを感じつつ、御宝号をお唱え
しました。手持ちの菓子や水を餓鬼や鳥獣に分け与え、また同行
のメンバーにもお分けし、逆に頂いたりして、欲張らず、貪らずに分
かち合っての修行となりました。自分が一口我慢することは、他の
人に一口分行き渡るのですね。
高尾山の稲荷山コースなどもそうですが、この辺りでは同じ様な道
を繰り返し、繰り返し歩きます。曲がる度に今歩いてきたのと同じ景
が出てきます。そんな思いを見透かされていたかのように、急遽、
道から外れ、山林へ入りました。十界修行・相撲(修羅界)の土俵で
した。相撲といっても皆様が想像する様な、「のこった・のこった」の
お相撲ではなく、金剛杖を使用した押し合い圧し合いでした。
最初は相手を押し倒そうとか引き倒そうと思いながら勝敗を意識し
ていましたが、相手の顔を見ながら相撲を取ってると不思議と相
手に合わせてバランスを取るようになっていました。相手が前に倒
れそうなら押してあげ、後ろに倒れそうなら引いてあげといった具
合に。まさに闘争心を滅する修行でした。
三合目・四合目の大黒天と法楽。
四合五勺の御座石浅間社に到着。懺悔(人間界)の修行です。
五体投地し自らの犯した罪を懺悔しました。
いよいよ残すは、五合目までの道のりです。
五合目の道標はすぐに出てきました。しかし、そこから、本日
の宿である佐藤小屋がなかなか見えてこない。ひっぱります
五合目。階段をのぼりながらふと見上げた先に疲れを吹き飛
ばす笑顔が迎えてくれました。
本日お世話になる、佐藤小屋にて、ご挨拶と法楽。
五合目は人間界と天界の境だそうです。いよいよ本日最後の
修行である、延年(天界)です。
延年は寿命を延ばす意味で、地獄や餓鬼などの苦しみより解
脱して大慈大悲の心を生じ、喜びを表す修行です。
「いやませどしーっ」と叫びながら万歳を繰り返しました。
最初は照れもありましたが、何度も繰り返すうちに、なんともい
えない満足感・喜悦感につつまれました。
後ろを振り返れば、雲の間から、八ヶ岳や山中湖がみえました。
ここまでのご褒美なのか、山小屋がなんと貸切状態でした。
想像以上の広いスペースで眠ることができ、すっかり疲れを
癒すことができました。
いよいよ、明日は八合目を目指します。
本日の歩数:24130歩 合計:117449歩
次回「十界修行成満」へつづく